Waku Waku Gym

なぜ、最初鉄棒ができなくて泣いていた子が後に笑顔になるのか? ~わく通2023年11月号

現在、当ジムに所属するすべての子供は鉄棒前回りができますが、入会当初はできなくて泣いてしまう子が何人かいます。

今回はその原因である運動の「感覚」についてお話したいと思います。

鉄棒前回りをする際には必ず頭の上にお尻が来る状態(逆位体勢)になります。

「お布団干し」などとも呼ばれるこの状態は、頭が地面に近くなり、このまま滑り落ちると頭から落下してしまうという危険を感じる体勢です。

危険や恐怖を感じることは人間という生物として自然なことですので、逆位の経験がない子供は当然泣きじゃくって恐怖感を示すのです。

しかし、この感覚を何度も経験することによって慣れてくると、徐々に恐怖を感じなくなってきます。

さらに慣れると恐怖はおろか、むしろ楽しくなって何度も前回りをするようになるのです。と言うのも、逆位は普段の生活では経験することのない感覚のため、好奇心旺盛な子供はこの感覚を楽しむようになるからです。

これが運動能力向上のためにとても大切なことで、様々な感覚を初めて体験する際には恐怖を感じるものの、何度も繰り返すうちに慣れて楽しくなってくる、そして、その感覚を体験する年齢が低いほど、その後運動能力の向上に有利であるということです。

そのため、当ジムでは2,3歳クラスから積極的に鉄棒前回りを行うようにしています。

かつて、トライアルに来たお子様が鉄棒前回りをした際に泣いてしまい、それを見たご両親が可哀そうだからとその子を連れて帰られたことがありました。

しかし、その子も何度か経験を重ねていれば間違いなく怖がらずにできるようになっていたはずです。

また、鉄棒経験の全くない18歳の筋肉質のタイ人男性に鉄棒前回りをやるように促してみた事がありますが、怖がって全くできなかったこともありました。残念ながら彼はこの先も鉄棒に近づくことも、鉄棒を回ることもないでしょう。

さらに、かつて私が大学で体育教師をしていた際に、でんぐり返しができない留学生がいました。

これもでんぐり返しの経験がなく、回るという感覚が身体に染みついていなかったことが原因です。

でんぐり返りや鉄棒前回りができないと聞いて、皆様の中には信じられないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは日本の体育教育がしっかり子供たちに回る「感覚」を体に覚えさせることが出来ていた成果でもあるのです。

運動の世界では「習うより慣れろ」という言葉があります。これはまさに感覚のことを言っているのです。

鉄棒にぶら下がる、トンネルの上を歩く、逆立ち、三点倒立をする、平均台の上を歩く、ジムでもよく行うこのような運動は「感覚」がとても重要ですので、何度も繰り返し行い慣れることが大切です。

ただ、感覚を覚えさせる際には必ず恐怖との戦いがあります。

これは先ほどの例のように、ある年齢に達してしまうと恐怖の方が打ち勝ってしまうので、今のお子様の年齢がその「感覚」を身につける最適な年齢でもあるのです。

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